フィクションの中のリシュリュー

フィクションの世界で描かれるリシュリューです。ほぼ悪役ですね。強いから仕方ない。

  • 小説
  • 「三銃士」A・デュマ作 鈴木力衛訳 講談社文庫 1975年
    リシュリューといえば三銃士、三銃士といえばリシュリューです。私の場合。「猫背の爺さん」とか「長老」とか、ひどい言われようですね。「恋人のエギヨン夫人」とか「姪のコンバレ夫人」とか、2人とも同一人物ですよね。しかし2巻では同一人物だとの注釈が入っています。この扱いが気になります。「年はまだ三十六、七」と記述があるのに、読者が勝手に老人かと受け取ってしまうリシュリューの大物感。ミレディの悪行ぶりを聞かされて少し動揺するリシュリュー。かわいい。

    「王妃の恋」氏家琴子作 碧天舎 2005年
    衝撃の設定です。リシュリューの少年期から亡くなるまでを追った長編ですが、年表を頭に入れながら読みました。完璧な感じのリシュリューです。容姿も肖像画とは違うようです。これは著者にとってのリシュリュー像なのですね。ニヤニヤしながら一気に読みました。しかし、しょうもない王妃がさらにしょうもなく描かれていて、なんだか情けないなあ、マリー・ド・メディシス。

    「新・三銃士 ダルタニャンとミラディ」藤本ひとみ作 講談社 2008年
    主人公はミラディで、ダルタニャンと三銃士は脇役です。原作を180度転回したとこから見た物語。主人公の上司なせいか、原作より大幅に記述の多いリシュリューは、有能な切れ者で人物像に奥行きも出て魅力的です。「少年編」と「青年編」の2冊で原作三銃士のちょうど2冊分です。賛否ある作品かと思いますが、さわやかな読後感と何よりリシュリューが素敵なので私は好きです。

    「テュルリュパン ある運命の話」 レオ・ペルッツ作 垂野創一郎訳 筑摩書房 2022年
    リシュリュー本人は登場しませんが、その存在が人々を動かしています。陰の存在でありながら人々を恐れさせるには十分すぎるのは、まさにリシュリューです。民衆を扇動させて貴族たちを滅ぼそうという設定は荒唐無稽ですが、お話そのものは面白いです。

  • 映像作品
  • リシュリュー TVシリーズ(フランス 1977)
    ネット上で視聴できるのですが、フランス語です。まったくわからないので、画像だけ見ましたが、おおよその流れを追って楽しみました。いたいけな少年時代のリシュリュー。おしゃれしてパリのきれいなおねいさんに会いに行くリシュリュー。銃の試し打ちや、剣術の練習をするジョゼフ神父とリシュリュー。下着のままお風呂に入るリシュリュー。ヴァレット枢機卿はちゃんと脱いでいましたよ。いろいろ突っ込みたいこともありますが、生活風習の描写が面白かったです。(時代考証完璧かどうかは謎ですが・・・)

    アニメ三銃士(日本 1987)
    衝撃の三銃士設定となぜかお年寄りのリシュリュー。リアルタイムで見ていたはずですが、あまり覚えていません。ショックが大きすぎたのかもしれません。

    三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船(米英仏独 2011)
    アカデミー賞2度受賞のクリストフ・ヴァルツがリシュリュー役を演じました。おこちゃま国王夫妻と初老のリシュリューの図は史実より年齢差がありすぎです。まあ、話の内容はともかく、ラ・ロシェル攻囲戦を描いたモットの絵と同じ格好をリシュリューにさせてみたり、剣術の練習をさせてみたりとリシュリュー好きの心をくすぐってくれました。赤い僧服の上に鎧を着こむ必要は、まったくなかったにもかかわらず、わざわざシーンを用意してくれてありがとうです。スタッフに絶対にリシュリュー好きがいるに違いない。

    Richelieu: La pourpre et le sang TV Movie (フランス 2014)
    友人の息子でかわいがっていたサン・マールを王に紹介し、その彼が王の寵愛をいいことに次第に増長していきやむなく…。王太子が生まれるエピソードがあるので1638年あたりから1642年のお話でしょう。リシュリュー役の俳優がイメージに合わなくて違和感あります。もう少し縦に長い体形の人にお願いしたい。サン・マールに言われて服が派手になる国王やらリシュリューに気を遣う王妃やら、お気に入りの姪のことを言われて目じりを下げるリシュリューやら、端々に挟まれるネタも楽しいです。家(城?)から国務会議に出席するのに馬車で結構な森を行くのですが、おそらくリュエイユ在住でしょう。パリまで8kmくらい。当時にとっては結構遠い距離でしょうね。重臣は王宮の近くに住まなくていいのでしょうか。リシュリューだから好きにしていいのでしょうか。そこのところが気になります。